王の男

『ワンエナムジャ(王の男)/King and the Clown』 2005年 / 韓国
監督:イ・ジュニク
脚本:チェ・ソクファン
原作:『爾』(舞台劇)
衣装:シム・ヒョンソップ
アートディレクター:カン・スンヨン
照明監督:ハン・ジウプ
撮影:チ・ギルン
音楽:イ・ビョンウ
受賞歴:'06年第29回黄金撮影賞/
         金賞(チ・ギルン)、作品大賞、新人男優賞(イ・ジュンギ)
     '06年第43回大鐘賞映画祭/
         最優秀作品賞、監督賞、男優主演賞(カム・ウソン)、男優助演賞(ユ・へジン)
         新人男優賞(イ・ジュンギ)シナリオ賞、撮影賞、
         人気賞(イ・ジュンギ、カン・ソンヨン)、海外人気賞(イ・ジュンギ)
     '06年第27回青龍賞/
         音楽賞、ベストカップル賞(カム・ウソン、イ・ジュンギ)
     '06年第14回春史大賞映画祭/
         男優主演賞(カム・ウソン)、男優助演賞(チャン・ハンソン)
出演:カム・ウソン(チャンセン)、イ・ジュンギ(コンギル)
   チョン・ジニョン(ヨンサングン)、カン・ソンヨン(ノクス)
   ユ・へジン(ユッカプ)、チャン・ハンソン(チョソン)
 

公開前にネットでMVを観て非常に魅かれるものを感じたものの、
なかなか観る機会がありませんでした>作らなかっただけ、とも言えるが(^^;)

日本の歴史にも疎い私なので、韓国の歴史なんて全く知らないと思っていたのですが
王の母親が毒殺された、というくだりで
「あ、これチャングムのお父さんが関わった事件だ」と、分かったので嬉しかったです。
そう、『宮廷女官チャングムの誓い』で、チャングムが仕えた王@中宗(チュンジョン)の
前の王である燕山君(ヨンサングン)の物語なのでした。

燕山君に、架空の人物であるチャンセンとコンギルという2人の芸人が絡みます。

イ・ジュンギが演じる女形のコンギルは妖艶で非常に美しいです。
でも、アップになると髭の剃り跡が見えるし、筋肉も鍛えられているし
ナヨナヨしているどころか、男らしさが窺えます。
多分、それはワザとそう見せているのだと思います。
美しいけれど、やはり男性…というところが重要だからです。

2人の芸はシモネタが多くて、かなり下品で、あんまり笑えないんですけど
当時の庶民にはウケたんだろうな…と思えて、リアルに感じます。
猥雑で、エネルギッシュで、生活感が溢れていて…まさに“大衆”って感じです。

そうした芸の題材が、今度は政治を揶揄したものに変化していきます。
文字通り王様のスキャンダルを暴くものに。
これもまた、芸術というものの辿る道だな…と興味深いものがあります。

で、問題はその後。
2人+新しい仲間達は、その王様の前へと引き出されます。
王様を笑わすことが出来れば罪は問わないという条件が出されます。

それで、王様を笑わせるために色々と工夫していく、いわば知恵比べの物語なのかな…
と思っていると、意外にも王様はすぐに彼らが気に入って爆笑します。

燕山君は凶暴な独裁政治で知られている人物ですが
(これまた『チャングム』で語られていましたね)
一方では、妓生の文化を栄えさせ、大道芸人にチャンスを与えたという点でも
有名なのだそうです。
映画の中では、その過程が描かれているというわけですね。

芸だけでなく、王様はコンギルに人としての慰めも求めるようになります。

女性顔負けの美しさを持つコンギルは、これまでにも貴族達から目を付けられてきました。
チャンセンは彼を救おうと努力し、その流れで今の状況に陥ったようなものなのに
そのチャンセンの目の前で、コンギルは王の寝室へと呼ばれていきます。
それまでは、皆の生活のために自己犠牲の精神で求めに応じようとしていたコンギルが
今は自らの意志で王の傍にいるように見えます。

母親の死の痛手と、王という立場の孤独感で、
実際にはまだ子供のような心を持った王様は独り怯え、悲しみ、あがいていたのでした。
そんな王様に、コンギルは同情と、ある意味“愛”も抱いていたのかもしれません。

チョン・ジニョンは、狂気をはらんだ王様の心の動きを迫力をもって演じています。
そのせいか、コンギル達を陥れるノクスの存在がイマイチ霞んでいたような気がします。
王様に忠義を尽くすチョソンの存在も、あまりパッとしなかったような気も。
おバカな私は彼こそが黒幕で、最後は彼が笑ってオシマイかと疑っちゃいました>ぇ

まあ、そんなわけで>どんなわけだ

全ては悲劇へと雪崩れ込んでいくわけですが…その最後の最後まで、
あくまでも芸人としての態度を守り通したチャンセン&コンギルの姿は感動的です。
この後半部分になってくると、やはりチャンセン役のカム・ウソンが素晴らしいです。

芸術って政治に翻弄されるけれど、芸術そのものは続いていくのですよね。

ラストシーンは夢の中、2人+仲間達が踊りながら道化ながら歩いていきます。
彼らの十八番である、盲人同士の会話をギャグにしたものが交わされるのですが
「皆、ここにいるよ」という言葉に泣けました。
 

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